<<
Home
/
著者インタビュー
/
File 018 『市場心理とトレード』リチャード・L・ピーターソン博士
『市場心理とトレード』リチャード・L・ピーターソン博士 出版記念インタビュー&直筆サイン本プレゼント
かつてベンジャミン・グレアムは「悲観主義者から買い、楽観主義者に売れ」と言ったように、他の投資家の行動や心理を理解していた大物投資家は多い。市場参加者の感情(センチメント)を数値化しようとする研究によって、いまやニュースやソーシャルメディアに潜む膨大な感情を解析した指数も登場している。この分野で大きく貢献している行動経済学の専門家、リチャード・ピーターソン博士が『市場心理とトレード ビッグデータによるセンチメント分析』の出版を記念して語ってくれた。
Q.
博士は精神科医と金融コンサルタントの2つの顔をお持ちですが、キャリアを途中で変えたのですか?
私は金融市場における複合分野からのアプローチにずっと興味を持っていました。はじめの動機は、父がファイナンス教授で私に株取引の資金を渡してくれました。フラストレーションとともに資金を失う経験をしました(笑)。今では多くの投資家が失敗する理由がわかります。
私が知りたかったのは、個人投資家や私自身のマーケットへのアプロ―チを改善する方法です。そこで大学では 電子工学を専攻し、システマティックな思考法や思考の構造を学びました。その経験が市場を予測するためのニューラルネットワークを用いた定量的モデルを構築することにつながりました。また、そうした数学的なパターンの世界は、メディア・センチメント(メディアに存在する感情?)に大きく関わり合いがあるように思えました。
私は世界最高の数学者には多分なれませんが、価格を動かす原因となる、人々の情報や人間心理を理解することはできるのではないかと気づきました。そこで医大に進学し、人間心理を学びはじめたのです。当時、心理学では知りたいことが学べなかった。もっと深く生物学的なメカニズムや、人間がどう考えるかを知りたかったのです。私のキャリアを通して、いつも人間行動と金融市場がかかわっています。
Q.
これまで3冊の書籍を書かれていますが、これらを書いた動機は何でしょうか?
1冊目の『脳とトレード』では、投資家心理の全体像を扱いました。それまでにもこの分野では面白いストーリーがたくさん書かれてきましたが、それぞれの分析をつなぐ「科学」はありませんでした。そこで本書では投資家心理の働きを知るために、断片的だった分析をまとめて全体像をみようとしたのです。
Q.
書籍の出版の反応はどのようなものですか?
1冊目は米国での売上は好調でした。1冊目が自然科学の本なのに対して、2冊目はより易しく書かれた一般書です。そこで気づいたのは、他の多くの投資本は、心理の科学ではなくマーケットについて書かれています。また、一般的な投資家は自分がどのように考えるかについて考えることはありません。むしろどう儲けるかだけを考えています。たぶん。トレード歴7年の個人投資家が言っていましたが、「自分はなぜ同じバカなことを繰り返してしまうのだろう」「もっと利益を出す意思決定はどうしたらよいのだろう」とやっと考えはじめたそうです。おそらく一般的に7年くらいトレードを続けると、自分自身の意思決定について考察できるようになるのでしょう。
Q.
今作『市場心理とトレード』はTRMI(トムソン・ロイター・マーケットサイク指数 *)に焦点をあててますよね?
そうです。私たちはセンチメントデータに関する先行研究を広範囲に行いました。その結果、感情を測定したり人の意思決定を予測する指標として。TRMIにまとめたようなセンチメントデータよりも説明力の高いデータは見つかりませんでした。
* トムソン・ロイター・マーケットサイク指数:
株(8000銘柄)、国(130か国)、通貨(30種類)、商品(35種類)について、ソーシャルメディアやニュースから取り込んだ感情やマクロ経済の情報を配信するサービス。トムソン・ロイター社が専属的に配信する。
|
Q.
『新マーケットの魔術師』に登場するブレア・ハル氏と提携していますね。同書はパンローリングから邦訳が出ています。
それは素晴らしいですね!ブレア・ハルは投資家で、弊社のオーナーの一人です。昨年、彼の資金をトレードしました。彼は重要な支援者ですよ。
Q.
国によってセンチメントに傾向はあるのですか?
マーケットパターンは一貫性があると思っています。これはどの国でも同じです。しかし、多少の違いはあります。例えば感情表現の違いです。アメリカとカナダでは、「怒り」は予測可能な変数です。一方で中国では、「喜び」がより予測可能な変数です。これは文化と慣習の違いによります。二つは真逆です。
Q.
文化と慣習の違いがトレードにも関係しているのですね。日本はどうでしょう?
日本市場はよりファンダメンタルなニュースに反応します。その結果、よりモメンタムで、合理的な動きをします。一般的に同じ行動パターンを持っていても、市場別に株価変動を分析すると、文化と慣習の違いが表れます。しかし、個人では同じタイプのミスを起こします。マーケット毎に分析すると、少しですが違いが確認できます。
古典的なトレードでは 誰もが同じデータをみています。トレードで成功するには 誰もみていなデータをみる必要があります。より広く全体図をみて、長期的な投資をするべきです。特に、一般投資家はこのようなスタンスで投資するべきです。
Q.
日本人投資家に強みはありますか?
今後の金融市場において、マシンラーニングが日本の強みになると確信しています。アメリカでは、マシンラーニングに長けた新卒者はグーグルやフェイスブックといったネット関連企業に採用されています。そのため、金融業界はそういった新卒者やプロをみつけるのに苦労しています。
アメリカの金融業界は、マシンラーニングの専門家を探しています。日本では大学や研究機関が、マシンラーニングにフォーカスしています。グーグルのサーチ頻度を調べると、日本では「マシンラーニング」が「データサイエンス」よりも上位にきます。一方でアメリカでは「データサイエンス」が上位にきます。
文化という点では、日本はかなり整っています。ビックデータの分野で日本は遅れているのではなく、
マシンラーニングの分野ではリードしています。特に、金融分野ではリードしています。もしかすると、誰も日本の長所に気づいていないかもしれません。
10名様にサイン本プレゼント
出版を記念して、ピーターソン博士の直筆サイン入り書籍『市場心理とトレード』を抽選で10名様にプレゼント!
ご応募はこちらから
応募締切:2017年12月21日(木)
|
著者紹介
リチャード・L・ピーターソン(Richard L. Peterson)
マーケットサイクのCEO(最高経営責任者)で、行動経済学の専門家で、投資顧問や精神科医や金融コンサルタントでもある。6カ国で翻訳された『脳とトレード』はロングセラーになっており、『マーケットサイク』(MarketPsych)とともにキプリンガー誌のベスト金融本に選ばれている。また、同氏はAP通信に「ウォール街最高の精神科医」と称され、スタンフォード大学で精神科医の資格も修得した。現在、カリフォルニア州に家族と在住。
|
|
<<
Home
/
《著者インタビュー》一覧
|