<本文より>
「そうです。不良債権なんて無尽蔵にあるということですよ。この国は、どっちにしたって変わらない。いつまでたっても、馬鹿な人間ばかりの集まりだ。だから僕らには天国なんです。この国の人間たちは、みんな目先のことばかりに捕らわれて、しっかりと将来を見通す目も、大きく目を見開いて世界を見回す知恵も持ちあわせない。そういう人間がいる限り、われわれの商売はすたれないということです」。古樫は、そう言って満足そうに笑ってみせた。その端整な横顔をじっと見つめながら、坂木は言いようのない寒気を覚えたのである。
<目次>
第一章 再会
第二章 獲物
第三章 罠
第四章 容疑
第五章 決断
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