<「おわりに」より>
ユーロはうまれたばかりであり、その地価Rの大きさについてはまだ分かっていないところがあるが、すでに重大な盈虚を及ぼしている。単にヨーロッパの中心部の12ヶ国、3億人を超える人々のお金がユーロに転換されたという通貨量だけの問題ではない。ユーロがいずれ安定した信頼される世界通貨になるという期待から、国際資本の流れに乱れが生じて、それが近年の世界経済の変調の大きな要因になっている。(中略)
97-98年のアジアの通貨危機に続いて、01-02年にアルゼンチンで起きた金融危機、日本経済の一段と深刻な変調も、第1章で明らかにしたようにユーロの本格流通という背景のなかでの出来事だといえる。(中略)
ユーロが投げた波紋の大きさからみて、国際資本のマネーフローが穏やかな流れに戻って世界経済が落ち着きを取り戻すまでには相当な時間がかかりそうだ。またユーロ誕生によってこれまでに起きている出来事は、地震でいえば最初に訪れる縦波によるもので、ほんとうの大きさは横波の揺れが来るのはこれからだろうと思われる。
<目次>
<著者紹介>
(よこやま・さんしろう)1942年、山形生まれ。上智大学卒。新聞社のカイロ、ロンドン各特派員、米ジョージ・ワシントン大学中ソ研究所客員研究員w経て現在、戸板女子短大教授(国際関係論)。上智大、東京女子大、東京農工大講師を歴任。国際政治学舎、ジャーナリストとして執筆を続ける。主な著書に『二十のEC物語』『ユーロパワー日本を襲う』などがある。
杉本等/有吉功一 時事通信社出版局
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